何で、毎回ヒットポイントのゴムをけずって返却される?
2023.5.19 16:44
こんにちは
はさみ職人21年目オオタです。
今考えているのは海外進出。
日本のハサミ力を世界に広められたら、いいのになあと思っています。
さて、今回こんなご質問を頂きました。
実はよくある質問で、疑問に思われている方も多いかと・・・
かわいい字ですね。
(そう思ってしまう、オッチャン、きもいですね(笑))
「前回研ぎに出した所は今までも何回か
お願いしたことのあるハサミのメーカーさんなのですが
毎回ヒットポイントのゴムをけずって返却されるので、
なんでかなと思っています
(前々回の研ぎは他のハサミと一緒に初めての
メーカーさんに出し、ヒットポイントが消耗してるので
交換します。と言われたので)」
なるほど。
ヒットポイント削る問題ですね。
これって、
結論から言うと、たくさん刃を削っただからです。
ただ、例外も多いので、説明しますね!
まず、ヒットポイントを削らなくてはならない状況っていうのがあります。
えっ!ヒットポイントを削らなくて・・・?
えっ!削る?
えっ!すり減ってるんじゃないの?
消耗じゃないってこと?
普通に使っていて、ヒットポイントは減ることはないです。
小さくなっているのは、研ぎ屋さんがわざと削っているんです。
え~。そうなの~。知らんかった~。
次に、ヒットポイントを削らなくてはならない状況とは、です。
ちょうど、説明するのに、いいセニングがありました。
(これは別の方のもので、「ヒットポイントを取り付けてね」という依頼のあったものでした。ややこしくなるので、ここ小さい文字部分は無視してもOKです。)
こんな状態のハサミがあります。↓
いい感じじゃないですか!
でもね。ヒットポイントがないっす!
ないので、カチカチ音がします。
ってことで取り付けたとします。↓
いい感じです。
でもね!
えぇ~何か問題でもあんの?
でもねって、そういう流れっしょ!
そうです。
そういう流れです。
よーく診てください。
ヒントは、刃先です。
よーく診て!
はい!
拡大!
わかったかな?
刃先の刃先が閉じ切っていないです
つまり。
ヒットポイントがないと、刃先がきちんと閉じる。
ヒットポイントがあると、刃先は閉じ切らない。
です。
このセニングをちゃんと使えるようにするなら、
①ヒットポイントを削って小さくするか、取り外す。
②刃先を2櫛分くらい削る
③ハンドルを曲げる
という方法があります。
③ハンドルを曲げるのは、曲がらないタイプ、曲がるタイプがあります。このセニングは曲がらないタイプです。今回の質問の方のシザーも曲がらないタイプでした。
ちなみに曲がらないタイプを無理に曲げると、曲げることができるタイプと折れてしまうタイプがあります。
曲げられたらうれしいですが、曲がらなかったら、心とお財布が悲しいです。弁償・・・
ちょっと長くなります。
別の切り口からの説明です。
「オオタさん。たいへん、たいへん、落としやった。刃こぼれが!!」
よーく診てください。
刃先に赤い血のような刃こぼれがあります。
拡大しますね。
(手で加工した感じ、満載です)
この刃こぼれを直すには、削るしかないです。
とても硬い金属なので、歯医者さんの銀歯みたいに詰めるような処置は不可能です。
ピンクのところを削ります。
そうすると、(想像力を働かせてください)
刃先5櫛までが閉じ切らないです。
完全に閉じるために、ヒットポイントを削らざるを得ないです。
カットシザーの場合、刃先を削る方法もありますが、そうすると短くなるのでやらないことが多いです。
さて、
さて、
さて、
当初の問題に戻って、
何で、毎回ヒットポイントのゴムをけずって返却される?
これはたくさん刃を削ったからです。
もしかしたら、刃こぼれがあったのかもしれませんね。
大きければ大きいほどたくさん削る必要があります。
逆に、
少し荒れている程度で刃こぼれはない!ということでしたら、未熟な技術のため、削り過ぎたということになります。
「メーカーさんに出し、ヒットポイントが消耗してるので交換します。と言われた」
これは、よくわかならいのですが、基本ヒットポイントは消耗しないです。
ユーザーさんに分かりやすく伝えるために、このような表現にしたのかもしれませんね。
ということで、長くなりましたがヒットポイント消耗問題です。
こういうの、説明が難しいので、もしわかりにくかったら言ってください。もう少し考えて追加説明させて頂きます。
じゃ。
またね!
コメント