迷われているかたへ
「このひと、大丈夫?」と迷われているかたへ。
理容師さん、美容師さんのハサミは、
大切な道具ですし、そういった目で見るのは当然かと思います。
「お客さまの声」をみたら、
良さそうだけど、
でも、ちょっと心配・・・
そう感じるのも当然です。
どこの馬の骨だか、わからないわけですから。
自己紹介させていただきます。 はさみ職人 オオタトシカズです。
1970年6月生まれ。
長野県出身の頑固なの父と青森県出身の働き者の母の間に生まれた、第一子(長男)です。
赤ん坊のころは東京都の練馬区で、小学校からは埼玉県草加市八幡町で育ちました。
自然がまだたくさん残っていた頃で、田んぼでバッタをとったり、川でザリガニをとったりして遊びました。
はさみ職人になった理由は、人に頼ることなく、自分の腕を売りにしたかったからです。
例えば、
研ぎの場合、お客さんから研ぎの依頼を受けて、工場に出して、戻ってきて、お金をもらってという形が、人任せにし過ぎな気がして、好きになれませんでした。
どうせなら、お客さんからハサミを預かった時点で自分の責任で応えたかったというのがあります。
そして、もうひとつ。
はさみの業界に入ったのは、30歳を過ぎていました。
両親が洋服を作る職人であったのも影響してか、職人に対して憧れがありました。
そして、どうせやるなら、日本一とか、世界一とかそういったところを狙えるような分野で活躍したいと考えました。
30歳を過ぎて、大工さんや美容師さんは、、、難しいですからね(笑)
正直、競争が少なそうなところを狙ったわけです。
おかげ様で、独立開業してから、10年以上副業に頼ることなく、この仕事だけでやってこれました。
インターネットの普及のおかげで、
日本国内はもちろん、海外からのお客さまからのご依頼を受けることも増えてまいりました。
今後は、日本の誇れる技術を世界を舞台ににアピールするお手伝いができれば、いいなあと思います。
迷っているかたへ
改めて、ハサミを出すか?迷われている方へ。
「出さないほうがいいですよ。」
「当店に出さないで下さい。」
もし、迷っていらっしゃるのであれば、あえて言いますが、出さないほうがいいです。
いま、依頼されているハサミ屋さんが合格点なら、変える必要はないです。
むしろ、変えてはいけないと思います。
いまのハサミ屋さんが、ちょっと・・・・
もし、
今のハサミ屋さんがちょっと・・・・
ということでしたら、いろいろ検討する必要がありますね。
その際、注意するのは、
いきなりエースのハサミを出さない。
です。
一番良く使う、大事なはさみは、あえて、出さないほうがいいと思います。
失敗で戻ってきたら、悲しいですから・・・
- あまり使わないサブのハサミとか、
- 使わなくなって引き出しにしまってあるハサミとか、、、
- たくさんハサミを持っている先輩にまず、実験台になってもらうとか(笑)
そうして、帰ってきたハサミをよくチェックしてみてください。
そのときのチェックポイントは、
ポイント① ハサミ自体が小さくなっていないか?
必要以上に削ってしまう、未熟な仕事かどうか、チェックします。
ポイント② きれいか?
シンプルですが、良いチェックです。
「俺は独自の技術を編み出したから、この傷はその痕だ!」という研ぎのハサミをみることがあります。
研ぎに出して汚くなるって、どうなんでしょうか?
ポイント③ セニング
しっかり切れるか?意外とセニングをきちんと研げないハサミ屋さんがいます。
ポイント④ 話を聞いてもらえるか?
研ぎの依頼以前の人間としてどうかという話になってしまいますね。
「〇〇〇してほしい。」ということすら、聞くことができない職人さんもいらっしゃるそうです。
昔の職人は無口で、お客のことを考えなくてもいいということがあったかもしれません。
技術者として、ご自分の技術を発揮させるためにも、きちんと話をしてコミュニケーションがとれるといいですね。
ポイント⑤ リクエストを聞いてもらえるか?
例えば美容室にくる人が、おおざっぱな「キレイにして」というリクエストがあります。
もし、初めてなら、
「あまり長さを変えないで、毛先を感じにしてほしい」
「ショートで、トップにボリューを出してほしい。パーマを軽くかけたい」とか
そいういった細かいものがあるほど、よりイメージに近づけるものです。
ハサミも同じで、
「よく切れるように」というリクエストがあります。
しかし、よりイメージに近づけるためには、
「ブラントでしっかり切りたいので毛が逃げないように」とか
「セニングだけど、抜け重視で・・」みたいなリクエストは必要ですね。
それでも、心配ですね。
それでも、大事なハサミですから、心配ですね。
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あえて、言います。
無理して研ぎに出さないで下さい。
それは、当店に対しても、他店でも、同じです。
理美容のハサミは繊細で、いくらプロでも変な風になる可能性とうのはあるのです。
また、相性みたいなものもあります。
逆に、
信頼出来るところに出会ったら、早め早めに出したほうがいいと思います。
それは、
あなたのカット技術はそのハサミによって作られるからです。
ある美容師さんに聞いてみたことがあります。
「切れるハサミと切れないハサミ、どう違いますか?」
こんな答えでした。
『むずかしいですね。
切れないハサミというのは、切れないですよね。
あたりまえですけど、、、、、
切れるハサミというは、切れますよね・・・・
これじゃあ。
わからないですよね。
答えにならないですよね。
・・
・・・・
・・・・・・・そういえば、
切れるハサミだと、お客さんが寝ます!
普段良くしゃべる人でも、
だんだん静かになって・・・
切られる感覚が気持ちいいんですかね。
寝ますね。
そうだ。
今、気づきましたけど、寝ますね。』
きっとこの美容師さんを信頼していて、切られている感覚が心地いいからなんでしょうね。
今度は、理容師さんの話です。
千葉市である理容室のオーナーさんの話です。
そのお客さんとは、30年来の付き合いです。
当時オーナーは都内の店に勤めていて、そのとき初めてそのお客さんが来ました。
会社の近くだったらから来たそうです。
その後、オーナーさんは、別の店を経験して、千葉市に自分のお店を持ちます。
うれしいことに、移動しても通ってくれたそうです。
また、お客さんも、何度か引越しているそうですが、来てくれます。
「でね。
そのお客さん。
家の近くの別のの床屋に行っているんだよね。
やっぱり、毎回一回は行ってるね。
まあ、自分のカットとちょっと違うからね、わかるよ。
それでも、戻ってくるんだよね」
いま、横浜から毎月、時間とお金をかけて、いらっしゃるそうです。
ちなみに、土日だと横浜からその千葉のお店まで、高速道路を使って2,3時間はかかるそうです。
で。
そのお客さん。
特別親しいというわけではないそうです。
(このへんが、おやじのいいところですね。)
いつも椅子に座ると目をつぶっているそうです。
オーナーさんいわく、
「始めは眠いのかなあと思ったんだけど、違うんだよ。
眠くて目をつぶっているんじゃないんだよ。
こう・・・姿勢が崩れないからね。」
不思議ですよね。
「あるとき、教えてくれたんだよ。
『おたくのハサミ、よく切れるね。実はハサミを閉じるたびに数えていたんだよ。』
だって。」
いやー。
すごい話ですね。
・
話が長くなりました。
申し訳ありません。
・・
要するに、ハサミの研ぎを出す時は、慎重に出すといいです。
もしも、私とご縁があったときは、そのときはベストを尽させて頂きます。